『拙い憶い』


拙い憶いは行き場を失くし
途方に暮れていた
もう少し
巧く生きられたのなら
誰を傷つけもしないだろう
暗闇を目で探ると
見たくないものが見えてしまう
だが目を閉じる潔さもなく
茫然としながら
今日の終わりに瞼の幕を降ろせずにいた
追憶の河の水面は
橋の明かりを映して
私は辛うじて呼吸をしていた
もし此処がただの闇であったならば
私は容易く眠りに落ちただろうに
残酷な優しさがこの胸を刻み
その痛みに耐えかねて闇を見つめていた
今更何を探すというのか
手の中は空だ
かつてそこにあった手の形を記憶して
じんと痺れている
空虚だけが私を理解し
傍にあった
それを知って初めて私は目を閉じる
瞼の裏もまた闇だったが
眠りという救いが見えた
他には何も見ないことにして
眠りにすがりつく
脳裏に残る橋の明かりの瞬きだけが
私を後ろから抱きしめていた




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